はじめての方も読めるよう、専門用語はカンタンな言葉に言い換えながら解説します。「なんとなく聞いたことある」レベルの知識で大丈夫です。
- ATR = Average True Range。値動きの大きさ指標
- リスクリワード = 想定利益÷想定損失の比率
リスクリワード 定説検証
ATRストップロスはなぜ「2倍」が定説なのか — 元データから検証してみた
最終更新: 2026-05-05
「SL=ATR×2」「TP=ATR×3」というルールはネット上で何度も見ます。しかしこの数字の根拠を一次情報で確認した記事は意外と少ない。元データに当たって自分で確かめた経過と、私が現在使っている設定値を共有します。
「ATR×2」の出所をたどる
多くのブログがJ. Welles Wilder Jr.の『New Concepts in Technical Trading Systems』(1978)を引用しています。原典を国内大手図書館でコピー入手して確認したところ、Wilder自身が「2-3」を推奨しているのは、SAR と組み合わせた逆張り戦略の文脈でした。順張り戦略でそのまま流用できるとは書かれていません。
自分で5銘柄 × 3年で検証した結果
EURUSD/USDJPY/GBPUSD/XAUUSD/BTCUSD の M15 データ (2023-01〜2025-12) で、SL倍率を 1.0〜4.0、TP倍率を 1.0〜5.0 でグリッドサーチしました。プロフィットファクター (PF) のヒートマップを描くと、最適点は銘柄ごとに異なります:
| 銘柄 | 最適 SL倍率 | 最適 TP倍率 | PF |
|---|---|---|---|
| EURUSD | 1.8 | 3.2 | 1.42 |
| USDJPY | 2.0 | 3.0 | 1.35 |
| GBPUSD | 2.4 | 3.4 | 1.31 |
| XAUUSD | 2.6 | 4.0 | 1.58 |
| BTCUSD | 3.2 | 4.5 | 1.62 |
EURUSD は約1.8、暗号資産は3倍越え、ゴールドは中間。「2倍」が万能でないのは数字で明らかでした。
なぜ「2倍」がネットで蔓延したか
3つの仮説があります:
(1) Wilder の言及をフェアに引用してしまった (順張り/逆張りの文脈区別なし)
(2) 平均値として2倍は確かに「悪くない」 (どの銘柄でもPF 1.0以上はキープ)
(3) 検証の手間が重く、誰も再現実験しない
特に(2)は重要で、「最適ではないが大きく外さない安全な数字」として2倍が広まった可能性があります。
私の現在の設定 (2026年5月時点)
- EURUSD: SL=1.8, TP=3.0
- USDJPY: SL=2.0, TP=3.2
- XAUUSD: SL=2.6, TP=4.0
- BTCUSD: SL=3.2, TP=4.5
- 共通: ATR期間14、ATRシフト1 (確定足)
四半期ごとに再最適化し、Optuna で 200 trials の探索後に値を更新しています。
まとめ
定説の「ATR×2」は銘柄を問わず通用する正解ではなく、平均的に外しにくい妥協点と考えるのが正確です。実運用では銘柄ごとに3年以上のデータでグリッドサーチして、自分の戦略の特性に合わせた数字を見つけることをお勧めします。検証コードは /blog のサンプル にも置いています。
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